ミラノ万博特集 (2) 食のテーマ発信で際立つ欧州

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食のテーマ発信で際立ったスペイン、スイス、オランダ
日本は地球的な食のさまざまな課題への解決アピール


ミラノ万博特集2は、今回の万博が大きくテーマに掲げている「地球に食料を、生命にエネルギーを」のうち、とくに「食」に関して、各国パビリオンがどんなメッセージ発信をしているか、際立った特徴があるかどうか、お伝えしよう。

奇抜発想でスイス館は「責任ある消費行動」求めたことが話題に


「発想が面白い」「メッセージに意外性がある。思わず『何だろう?』と入場客をひきつけるところがすごい」と、万博関係者の間で話題になったのがスイス館だ。
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メッセージは「どうぞご自由に好きなだけお持ち帰りください」とあるが、その一方で、「モノがなくなっても補充しませんので、みなさんは、多くの人のために、責任ある消費行動をとることが大切です」という。要は、世界中の「食」は有限であり、だれもが共有できるように「責任ある消費行動を」というわけだ。この奇抜なアイディアで、入場客にじっくり「食」の問題を考えさせるところがすばらしい、という評価になったようだ。

スペイン館は「農」と「食」連携をテーマ、日本食文化との接点多い


「農」と「食」の連携テーマに取り組んだのがスペイン館だ。パビリオンの中に入ってみると、周囲の壁には、スペインが農業国であることをうかがわせるスペイン各地のさまざまな野菜など農産物の生産現場の写真が映し出されている。まるで日本の農業現場を見ている錯覚に陥るほどで、ほとんど違和感がない。

そのあと館内を歩き進むと、興味深いのは、「農」の現場でとれたさまざまな食材がレストランの調理の現場に持ち込まれ、そこで丹念な調理を経て、おいしそうに盛り付けされて見栄えのする「食」に早変わりしていく、言ってみれば「農」と「食」の連携ぶりが映像写真で描かれる部分だ。なかなか見ごたえがある。
具体的には、調理の現場で、シニアのシェフが若手の調理人に対して、食材を生かしたスープ、ソースの作り方などを指導する状況を映し出す。生産者が一生懸命つくった農産物のよさを引き出すために「食」の部分で真心を込めて調理することが重要だ、とシニアのシェフが若い調理人にアドバイスしていることが映像から十分に読み取れる。

日本食の調理の現場でもよく見かける光景で、日本の食文化が、食材のよさを引き出す調理技術に磨きをかける点では、スペインの食文化も全く同じなのだ、ということを実感させた。「農」と「食」の連携を大事にする日本の食文化との接点が多い、という点ではとても親近感を持った。

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これらスイス、スペインのパビリオンと違って、少し変わっていたのがオランダ。他の国々のように大々的なパビリオンを構えず、ただ大きな広場がありフードトラックの店がずらりと並んでいるだけ。それらのトラックは、日本のビジネス街で軽トラックに弁当を積んで売ったり、あるいは車の中で調理したカレーを売るファーストフードタイプのトラックによく似ている。テーマ館はいったいどこにあるのかと思ってしまう。
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そのいくつかをご紹介しよう。「FUTURE FARMING(未来の農場)」と題するパネルではニワトリのホテル、牛にロボットが授乳はじめ、無人トラクターが畑を自動運転で動き回る、といった未来の農作業現場を描き「オランダはさまざまなイノベーションを駆使しながら動物たちとのフレンドリーな農業をめざす」という。発想が面白い。
そのイノベーションに関して、別のパネルではオランダが誇るガラス張りの大型施設園芸で、スマートフォンを使って植物に必要な肥料や水などの供給指示をリアルタイム情報で送り、1ヘクタールあたりの収量を効率的に上げる現在の生産の仕組みを描いていた。
極め付けは「NEW FOOD SOURCE(新しい食料資源)」というパネルで、オランダの代替食料資源への取り組みが描かれている。動物性蛋白源の肉に代えてALGAE(藻)、レタスに代えてSEAWEED(海草、海藻)にチャレンジしているという。
すべてのパネルがチャレンジングで、オランダ農業の強みをアピールした。

韓国館は発酵食文化アピール、イスラエル館が外壁に植物の変わり種


マーケッティングやブランディングのうまさでエレクトロニクス製品の世界市場シェアをとった韓国がミラノ万博会場でも、アピール度の巧みさで存在感を見せた。
韓国館のテーマは「韓国料理・未来への提案――食こそ生命」。「調和」「発酵」「保存」をキーワードにし、現代社会の課題ともなっている肥満などを避け健康的な食文化を実現するには韓国の国民食、キムチがベストであるとアピール。白菜をニンニクやニラなどと一緒に付け込んで発酵させるキムチの作り方を紹介する。それと同時に、キムチをつくる巨大な壺をパビリオンの一角に置き、入場客の度肝をぬいた。

さらに、「食のシンフォニー」と銘打ったロボットショーもインパクトがあった。ロボットが巨大な2枚の液晶パネル画面を巧みに使い、さまざまな色合いの食材を映し出すと同時に、それらの食材をキムチ壺のような壺の中に入れて発酵、保存させたあと、一定期間後に口にすれば人間はすべて健康的な食生活が実現できる、と映像表現した。

変わり種はイスラエル館だった。パビリオンの外の壁面を使って、さまざまな植物を植え付けている。砂漠が多く食料生産に苦しむ中東諸国と隣接するイスラエルは、それらの国々とは対照的に、いかにして土地を開墾し灌漑施設を整えて、栽培可能な農作物を開発したかをアピールする狙いがあるのは間違いない。
パビリオンの中では、砂漠地帯に入植し4代にわたって農業生産に携わる家族を映像技術によってストーリー展開で巧みに描き、とくにトマトなどの新種開発に取り組む部分は見ごたえがある。

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さて、肝心の日本館はどんな「食」のテーマ展開だったのだろうか。「地球的な食の課題に対し独創的に取り組む『日本のクリエーティブ・ソリューション』」というテーマ設定で、極めて正攻法での問題提起だった。
具体的には1)人口爆発と食糧危機、2)食の不均衡、3)気候変動・危機に瀕する世界の農業、4)食の偏在化といったテーマで、それぞれの課題解決のために、日本はどういった取り組みをしているかをアピールした。

まず、人口爆発と食糧危機の問題については、マグロやウナギの完全養殖、世界の食糧危機を救う「大豆食」、生命の豊かさを支える水田の活用などを提案した。食の不均衡に関しては、肥満や栄養不足、食品ロス・食品廃棄などの解決が世界的なテーマになっているとしたうえで、食品廃棄を減らすための先端保存技術の開発の重要性を訴えた。また、気候変動・危機に瀕する世界の農業対策として、気候変動に適応する強い品種開発の必要性、イネゲノムなど情報技術による農業革命を主張した。

日本館自体は、ミラノ万博会場でのトップランクの人気パビリオンだったため、これらの問題提起は、多くの入場者の目に触れて訴えるチャンスも多かったのは間違いない。ただ、スイス館のように、「責任ある消費行動を」といった形でシンプルにアピールするのではなく、日本館の場合、設定テーマが多いうえに、説明調のものが多かったので、どこまで浸透できただろうか、という感じがした。

寄稿者:牧野 義司 氏(経済ジャーナリスト、メディアオフィス「時代刺激人」代表)

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